錯視の科学館 展示 No. 8 | ||||||||
渦巻き錯視いろいろ | ||||||||
フラクタル螺旋錯視に潜んでいた渦巻き錯視たち | ||||||||
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2010年12月7日 新井仁之 | ||||||||
新井・新井 ([1]) はフラクタル螺旋錯視,双曲錯視などを考案し,独自の数学的方法で研究しました.その結果,フラクタル螺旋錯視が,じつはさまざまな成分から構成されていることがわかりました.その中にはいろいろな渦巻き錯視が含まれていました.なおこれらの成分への分解は大脳皮質V4野のニューロンによる情報の抽出と密接に関連していると考えています. | ||||||||
まずはフラクタル螺旋錯視の紹介から始めます. | ||||||||
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図1 Fractal spiral illusion (Arai-Arai,2007) ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2007. |
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これはフラクタル島と呼ばれるフラクタル図形を同心円状に配列したものです.同心円状に配列しているにもかかわらず,渦巻いて見えます. | ||||||||
このフラクタル螺旋錯視を,独自の(単純)かざぐるまフレームレットと独自の幾何的フィルタリングという方法で分解すると,さまざまな画像信号が得られます.これらの画像信号を再び加算するともとのフラクタル螺旋錯視が得られます.したがって,以下に示す画像信号はフラクタル螺旋錯視を構成する成分の一部とみなすことができます.そしてこれらの分解画像信号が渦巻き錯視となっています. | ||||||||
つまり,以下にお見せするのは,大脳皮質のニューロンの数理モデルがフラクタル螺旋錯視から抜き出したものといえます. | ||||||||
理屈はともかく,同心円状に配置されているパターンが渦巻いて見える錯視をお楽しみください. | ||||||||
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Fig. 2-1. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (1) (Arai-Arai,
2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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Fig. 2-2. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (2) (Arai-Arai,
2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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Fig. 2-3. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (3) (Arai-Arai,
2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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Fig. 3-1. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (4) (Arai-Arai,
2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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Fig. 3-2. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (5) (Arai-Arai, 2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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じつはFig.3-1 と Fig.3-2の画像信号は驚くべきものでした.というのは,図3はフラクタル螺旋錯視を構成する成分なのですが,渦巻きの向きが逆になっています. このことの意味については,後述することにします. | ||||||||
さて,これらは一部の例で,他にもいろいろなパターンの画像信号がニューロンの数理モデルにより算出されます.そこで,フラクタル螺旋錯視と同じ向きの渦巻き錯視を全部加算してみましょう. | ||||||||
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Fig. 4. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (6) (Arai-Arai, 2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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フラクタル螺旋錯視に潜む逆向きの画像信号を全部加算したものが次のものです. | ||||||||
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Fig. 5. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (7) (Arai-Arai,
2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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じつはこういったタイプの渦巻き錯視のほかに,時計回りと反時計回りの渦巻き錯視の混在型の渦巻き錯視も含まれていました.たとえば次のようなものです. | ||||||||
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Fig.6. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (8) (Arai-Arai, 2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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Fig.7. Spiral illusion in the fractal spiral illusion (9) (Arai-Arai, 2010). ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai 2010 |
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渦巻き錯視の数理神経科学的力学 | ||||||||
図1のフラクタル螺旋錯視は反時計回りに渦巻いて見える錯視です.これには反時計回り以外に時計回りに渦巻く錯視成分,反時計回りと時計回りに渦巻く混在型錯視成分があることがわかりました.時計回りの錯視成分はどのような効果をもたらしているのでしょうか? | ||||||||
一つの推測は, | ||||||||
時計回りの錯視成分は,反時計回りの錯視を抑えようとしているのですが,反時計回りの錯視成分が打ち勝って,フラクタル螺旋錯視の錯視を発生させている | ||||||||
というものです.この推論が正しいことを示すために,私たちは時計回りの錯視成分を除去して画像信号を再構成してみました.すると,原画像よりも強いフラクタル螺旋錯視が現れたのです!また錯視成分をすべて除去したら,錯視が消失しました.詳しくは | ||||||||
数学を使った錯視量の制御に成功 | ||||||||
をご覧ください. | ||||||||
参考文献 | ||||||||
[1] H. Arai and S. Arai, Framlet analysis of some geometrical illusions, JJIAM 27 (2010), 23-46. pdfダウンロード可. | ||||||||
フラクタル螺旋錯視の作り方については次の文献を参照してください. | ||||||||
[2] 新井仁之・新井しのぶ,フラクタル図形を用いた渦巻き錯視について,視覚数学e研究室報告 No.3 (2007) pdf ダウンロード可 | ||||||||
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