ポンゾ錯視 |
ホルツの錯視 |
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錯視の科学館 |
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ポンゾ錯視のおはなし |
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新井仁之,新井しのぶ |
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ポンゾ錯視と呼ばれているものがあります。まずはそれをご覧いただきましょう。 |
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図1:ポンゾ錯視 |
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二つの円のうちどちらが大きく見えますか?多分,右側の方が大きく見えるのではないかと思います。しかし,じつは両方とも同じ大きさの円なのです。これがポンゾ錯視と呼ばれているものです。 |
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ポンゾというのは人の名前です。Mario Ponzo。イタリアの心理学者です。ポンゾ錯視は,彼が1912年に発表した論文 |
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Rapports entre quelques illusions visuelles de contraste angulaire et l'appréciation
de grandeur des astres à l'horizon. |
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に出てきます。この論文以来,ポンゾ錯視と呼ばれるようになりました。 |
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ただポンゾ錯視はそれ以前に知られているものでした。新井・新井の調査によれば,1893年に Holtz という人がすでに発見していました。本によっては
ポンゾが考案したと書いてあるものや,Lipps が 1897年に発見していたと書いてあるものもありますが,じつは,Holtzの方がそれより早かったのです。詳細は新井・新井[1]をご覧ください。 |
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なおポンゾさんの名誉のために言っておくと,ポンゾさんの論文では,ポンゾ錯視はすでに知られているものとしています。 |
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それはさておき,ポンゾさんはなぜポンゾ錯視を論文で取り上げたのでしょうか。それは,『月の錯視』あるいは『天体錯視』を研究するためでした。 |
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月の錯視というのは,地平線近くにある月は,天頂にあるときよりも大きく見えるというものです。この錯視現象は古くから知られており,アリストテレスも論じています(詳しくはこちら)。 |
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ポンゾ錯視との関係はというと,月が地平線の近くにあるときは,月が地上の面と空天井(注1)とが交わる交点の方にあるから,ポンゾ錯視効果により月が大きく見えるのだというのです。 |
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注1:空天井という訳語はロス,プラグ著(東山篤規訳)『月の錯視』(勁草書房,2014)によります。 |
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Holtzさんはポンゾ錯視(と言う名前はあまり良くないように思うのですが)をどのような背景から発見したのでしょう。それは,じつは,単に球を見るよりも,紙片に置いた球の方が小さく見えるという事実を出発点にして円型Ponzo錯視を導出しているのです。そのイメージを描いてみましょう。(球ではなく円ですが。) |
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図2:ホルツの論文に記されていることのイメージ図。 |
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確かに左の小さな紙片上の円の方が大きく見えます。これはいわゆるデルブーフ の錯視(1865年)といえるでしょう。 |
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ところで,ポンゾ錯視には図1のもの以外に次のようなものもあります。 |
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図3:これもポンゾ錯視と呼ばれている。 |
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ここでは,これを便宜上,線分型ポンゾ錯視と呼ぶことにします。これはじつは,図1のような円形のポンゾ錯視とは少し異なる図形から来ています。これを考案したのは,Thiéry
という人で,彼の 1895年の論文に記されています。ただし,彼の描いたものは図3ではなく,次のような図です。 |
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図4:Thiéry の1895年の論文にある図を元に作図。 |
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線分 C'D'よりも線分 CD の方が長く見えるが,実際には同じ長さになっています。 |
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Thiéry はこれをつぎのような当時でも知られていた錯視から演繹しています。 |
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図5. Thiéry の1895年の論文にある図を元に作図。 |
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これは,線分 ab に比べて線分 AB の方が長く見えるという錯視です。,これはミラー・リアーによる錯視です。 |
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ポンゾ錯視についてはいろいろな歴史的経緯があります。これについて興味のある方はぜひ,私たちの調査報告論文である[1] をご覧ください。 |
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参考文献 |
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[1] 新井仁之,新井しのぶ,Ponzo錯視の源流をたどる - Ponzo錯視は W. Holtz により1893年に発見されていた -,視覚数学
e 研究室報告 No. 5 (2013). ここからダウンロードできます。 |
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